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 「アボリジニ」は、オーストラリア大陸に住み始めて4万年とも5万年ともいわれている先住民の総称です。一説には、17万年の歴史を持っているとも論じられています。ともあれ、5万年以上もほかの文明、文化と隔てられてきた民なのです。初めて彼らの存在が知られたのは、1770年、探検隊のジェームス・クック(英)がオーストラリア大陸最北端のヨーク岬に上陸したことに始まります。

 当時、大陸には数多くの部族が住んでいたとされ、40~50万人程度の人口があったとされています。しかし、大陸発見から約230年間に、外界からの伝染病、混血化、そしてアメリカ大陸と同様、開拓の名のもとにかなりの殺戮があり、現在では純血のアボリジニは10~15万人ほどしか確認されていません。

 現在、多くのアボリジニは都市部で居住し、ヨーロッパ系オーストラリア人と生活をともにしています。彼らの中には一部、伝統的な文化、生活を否定し、近代社会に融合しようとしているグループもあるようです。その一方、リザベーション(居留地)に住み、伝統を守り抜こうとしている人々もいます。しかし、さまざまな問題を抱えていることも事実です。生活環境、社会的地位の改善、教育や雇用など、問題は山積みです。しかし、アボリジニ自身、自らの権利のために立ち上がろうとしています。
 先に述べたように、自らの文化に背を向けているアボリジニがいる一方では、皮肉なことにオーストラリア国内の白人社会、諸外国の学者、文化人、芸術家、そしてビジネスマンが彼らの文化を評価し始めています。特に精神世界、絵画などは、かなりの量の書籍が出版され、和訳も出始めています。音楽ではオーストラリア国内のライブハウスを中心に、新・旧アボリジニミュージックのライブが行われています。しかし日本国内においては、ほとんど紹介されていないのが現状です。
 「ブッシュフード」とは、オーストラリア大陸特有のカンガルーをはじめとする野生動物、天然ハーブ、野菜、魚介類を使ったアボリジニ特有の食文化のこと。そのブッシュフードが、世界各地のレストランで修行を積んだオーストラリアのシェフたちの努力により、温故知新の新しいグルメとして現代に蘇りました。85年頃からオーストラリアではその価値が見直され、現在では五つ星クラスのホテル、高級レストランでブッシュフード素材が大陸独自の味として使われています。

 その中でもルーミート料理は肉質のよさ、低脂肪、低コレステロール、高タンパクというヘルシーな要素に加え、洗練されたレシピによる、料理としての完成度の高さが多くのグルメを魅了しています。また、チャレンジ精神旺盛なシェフ達により、アングロオーストラリアン、フレンチ、イタリアン、和食、中華アジアンテイストなどとの融合をはたし、オーストラリアを代表する伝統料理としての地位を築きつつあります。
書名: The Bushfood Handbook
著者: Vic Cherikoff


 Vic Cherikoff氏はアボリジニの食生活をブッシュフードとして広くオーストラリアに消費者に紹介した人物。現在、オーストラリアに数多くあるネイティブレストランもこの本にかなり影響を受けたことが想像されます。誌面は、多くの写真を使ってどのような食材がどのように活用されているか、視覚的にレイアウト。写真を眺めているだけでも、アボリジニの食生活の一部をかいま見るようです。また、アボリジニの食生活の簡単な概略と彼らの考え方、食に適した魚介類、植物、野菜、くだものなどの紹介もこれらを使った現代的なレシピの紹介、オーストラリア独自の植物リストなどが掲載されています。いわばブッシュフード素材の百科事典です。(まえがきを読む

書名: Uniquely Australian: A wild food cookbook
著者: Vic Cherikoff


 ブッシュフードの素材を使って、どのような料理ができるかを紹介するクッキングブック。この本の特長は、単なる料理の本の域を越えて既存のオーストラリア食文化に挑戦し、新しいオーストラリアの伝統料理を作り上げようとしている意気込みにあふれている点。この本が出版された1992年当時はまだ、ブッシュフードについて広くは浸透していませんでした。しかし、この本が出版されたことで、まず多くのシェフやレストランのオーナーたちがこのコンセプトを理解し、少しずつ実践してきました。そして今ではシドニーのEdna’s Tableを初め多くのレストランがブッシュフード素材を使った料理をメニューの柱にしています。さらに、こうしたレストランはオーストラリアのネイティブレストランとしての地位を確立しつつあります。 (まえがきを読む