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 「ルーミート」は、実はカンガルー肉のことです。オーストラリアでは、カンガルーのことを、「ルー」とも呼んでいます。ですから、オーストラリア人に「ルーミートってなに?」 と問いかければ、「カンガルー肉のことですよ」という答えが返ってくるはずです。

 日本では、ルーミートは食肉として、まだそれほどなじみ深いものではありませんが、オーストラリア国内では、驚くほど広く一般に親しまれています。一流レストランはもちろんのこと、食肉売り場でも販売されていますし、南オーストラリアでは、ルーミート専門店まであるほど。

 ヨーロッパでも、ドイツ、スイス、スエーデンなどを中心に需要が増えており、現在ではヨーロッパへのルーミート輸出量は約5000トン以上にも及んでいます。3年前から、フランスでも輸入が開始され、多くの人々の注目を浴び始めています。

 ルーミートの愛食家は世界中で増えており、日本でも日常的に食卓に並ぶ日もそう遠くはないはずです。



 それでは、なぜここ10年くらいの間でルーミートが世界から注目を集め始めたのでしょうか? それは、生活習慣病の専門家、メルボルン大学のオデア博士が、1984年にオーストラリア先住民のアボリジニの食生活について学会で発表したことに始まります。

 オデア博士は、先進国病ともいわれている生活習慣病を研究している過程で、都市部で生活しているアボリジニと、内陸部で伝統的な生活を続けているアボリジニとでは、健康面で大きな違いがあることに気づきました。なんと、内陸部で伝統的な食生活を守っているアボリジニには、生活習慣病といわれる糖尿病、高血圧、心臓病などの疾患がほとんどなかったのです。

 その大きな原因として、オデア博士が注目したのが、ルーミートを主タンパク源とするブッシュフードでした。特にルーミートから、ほかの食肉に見られない特性を発見。成分分析の結果、肉の部位にかかわらず、脂肪を含む量が100グラムあたり1~2パーセントと極端に低く、高タンパクながら低コレステロールの健康食肉であることが証明されたのです。

 オデア博士の学会での発表が、現代人の食生活に対する警告としてオーストラリアのマスコミで大きく取り上げられ、ルーミートが健康食肉として広く知れ渡ることになりました。この認識が世界にも広がり、健康食肉としてとてもポピュラーな存在になったのです。そして、オーストラリアでは、今や国立心臓病財団が食生活改善のための推奨食材に認定するまでになっています。



 ルーミートが人気なのは、低脂肪、高タンパク、低コレステロールだから、という理由だけではありません。今、世界の先進国では、純天然ミート(ゲームミート)に熱い視線が注がれています。ルーミートは飼育肉ではなく、オーストラリアの大自然で育った野生カンガルーを捕獲し、近代的な専門工場で精肉されています。そのため、添加物や抗生物質に汚染されていない、体にやさしい健康食肉だということが、広く支持される理由のひとつでもあるのです。

 また、オーストラリアでは、食肉の衛生管理について世界で最も厳しい基準を設けていることでも知られています。ルーミートを製造しているサザンゲームミート社の精製工場では、1週間に1回、必ず州の担当官3人の訪問を受け、精製の工程をはじめ衛生管理状態を厳しくチェックされています。衛生的かつ高品質を保ち、消費者が安心して食べられる食材を提供できるように制度化されているのです。



 ただ単にルーミートが、健康食肉だからといって広く浸透するわけではありません。それはルーミートが本当においしいからです。

 肉にクセがなく、さまざまな香辛料や調味料になじみやすいうえ、さっぱりとした食感。そして赤身の肉でありながら、とても柔らかい、それがルーミートです。

 オーストラリアのホテルやレストランでは、「ルーミートマリネと野菜のコンビネーション」がとてもポピュラー。さまざまな料理法があり、ふだんの食生活に取り入れやすい食材です。ぜひクッキングのページを参照に、ルーミート料理にチャレンジしてみてください。

 右記の成分分析表から、ルーミートは食肉のなかでは、とても特異な存在といえそうです。高タンパクという栄養価に対して、脂質は1パーセント未満。さらに低カロリー、低コレステロールで、まさに夢のような健康食肉です。

 実際、メルボルン大学で、生活習慣病の患者を対象に、オーストラリアの先住民の伝統的なルーミート中心の食生活に切りかえたところ、体重やコレステロール値の減少など、大きな効果が実証されました。オーストラリアの国立心臓病財団では、食生活改善のための推奨食材として、ルーミートを認定しています。

 ルーミートは、糖尿病や高血圧などの成人病を患っている方、医師に食事制限をされている方、きちんと食事をしながらダイエットしたい方、スリムな体を保ちつつ筋力アップのトレーニングを積みたい方に、最適の食材なのです。

  カンガルー肉 牛肉
(サーロイン)
豚肉
(ばら)
鶏肉
(もも)
水分(%) 74.2
57
 
51.5
 
67.1
タンパク質(%)
 
23.6
18.4
 
14.5
 
17.3
脂質(%)
 
0.9
23.3
 
33
 
14.6
繊維(%)
 
0
0
 
0
 
0
灰分(%)
 
1.1
0.9
 
0.8
 
0.9
エネルギー(Cal)
 
110
290
 
360
 
206
コレステロール(mg)
 
54
77
 
84
 
73
※カンガルー肉の成分分析は日本食品分析センターによる試験結果 、その他のものは三訂補日本食品標準表のデータを掲載しています。また、エネルギーは100グラムあたりの値になっています。

  カンガルー肉 牛肉 豚肉 鶏肉 羊肉
飽和脂肪酸 28 40 33 40 40
単不飽和脂肪酸 19 42 34 24 40
多不飽和脂肪酸 38 9 25 36 10
リノール酸 25 4 18 15 5
アラキドン酸 9 1 4 4 1
※参考資料:Marked Improvement in carbohydrate and Lipid Metabolism in diabetic Australian Aborigines Following Temporary Reversion to Traditional Lifestyle (オーストラリア メルボルン大学 薬学部 オデア博士)
オデア博士(Ph.D)は、ドイツ、フランス、米国で研究実績を積み、ロイヤルチルドレン病院、ベーカーメディカルリサーチインスティテュートを経て現在Monash Universityにて成人病を含めた各種研究をし成果 を上げております。

 これまでご紹介した通り、ルーミートは低脂肪、高蛋白、低コレステロールという特徴を持っています。しかし、ルーミートの脂肪にはさらに隠された秘密がありました。

  ルーミートの脂肪含有量はもともと非常に低い(部位に関わらず1~2%)のですが、その少ない脂肪の40%が多不飽和脂肪酸で構成されています。これまでのオーストラリアの専門機関による研究ではルーミートに含まれている多不飽和脂肪酸がルーミート中心の食生活を実践している人々の生活習慣病(高血圧、心臓病、脳梗塞等)を予防する働きがのあることが証明されています。つまり、低脂肪、高多不飽和脂肪酸、低コレステロール、高蛋白の組み合わせがルーミートダイエットを成功させ、トータルな形で生活習慣病を予防しています。

若い方にこそお勧めしたいルーミート

 
動物性脂肪の取り過ぎとカロリー過多は、心臓病の原因になる「高脂血症」を招きます。カンガルー肉は、食肉の中で最も低脂肪・低コレステロール・低カロリー、しかも野生肉ですから筋肉の発達による良質たんぱくと十分なヘム鉄分が期待できます。お肉が大好きだけど太り過ぎが心配、また、やせ気味だからもっとお肉をとりたい、という若い方にこそお勧めしたい食材ですね。
(※ヘム鉄分=健康な血液をつくる要素となる鉄分)
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井上正子先生